設立の経緯


私たちengawaは、2023年5月に設立をしました。そこに至るまでには、多くの困難や選択がありました。

長くなりますが、読んでいただけたら幸いです。①~③まで続きます。

①発起人のストーリー


 

engawa発起人のもえぎは、小学生の頃から周りとの違和感を感じながら生きてきました。特定の科目が理解できず、ついていけない。中学生になると、数学のテストは10点台。学校の先生や親からも叱られたり呆れられたりする毎日でした。また人間関係を築くことが苦手で、周りとも馴染めない日々が続きました。


 社会人になってからも忘れ物が多かったり、仕事がなかなか覚えられなかったり、ミスを繰り返してしまうことで会社に馴染めず職を転々としました。吃音(きつおん)もあり、うまく話せないことでのコンプレックスにも悩まされていました。後にADHDと診断を受けます。


 鍼灸の専門学校在学中には、精神疾患を抱えていた家族の自死を経験します。後悔や悔しさや怒りや安堵感、様々な感情が駆け巡る中で、生と死について深く考えさせられる出来事でもありました。

 

  そんな中知り合いに誘われ、当時は罪滅ぼしのような気持ちで、東京の山谷地域でホームレス状態にある方への鍼灸マッサージのボランティアを始めました。一度行ってみるとなぜかとても心が落ち着いて、そこから毎週通うようになりました。現在も定期的に通うほど愛着のある大切な居場所になっていて、味わい深い、人間らしい個性豊かな方たちに、いつも癒されています。

 

 そして家族の死に加え、祖父母を早くに亡くしていたり、鍼灸マッサージの仕事で患者さんの死を経験したりと、「死」というものに向き合わざるを得ない現実にぶつかります。

そのような経験をしている人は自分の他にもいるのではないか、と考えた結果、心理系の資格を取得し、様々な悩みを聴く電話相談員、自殺対策支援のSNS相談員としても活動を始めます。

 

 

 相談員やボランティアを続ける中で、感じるようになったことがあります。

 

みんな同じ人間で、同じように悩み苦しみながら生きている。その人のつらさはその人しか分からないけれど、人間はみな、弱さや生きづらさと共存しているのではないか、と。

 

そんな思いから、オンラインサロンで傾聴を学んだり、グリーフケアや対話についても興味を持って自分なりに学びを深めてきました。

 

 自分は自分のままでいい。自分の価値観と相手の価値観を分けて考える。自分の境界線を守る。

自分の生き方は自分で決めていい。

 

 そんな大切なことを学んでいく中で、自分の軸が太くなっていくのを感じました。

「自分と同じように生きづらさを感じている方のために居場所をつくりたい」という想いも強くなり、その想いを力に変え、クラウドファンディングでご支援もいただいたおかげで、開業することができました。

 

 

私のADHDや遺族としての生きづらさを救ってくれたのは、素晴らしいカウンセラーではなく、特効薬でもなく、「自分らしくいられる居場所」と「安心できる人との対話」でした。

 自分をどうでもいい存在だと思ったり、人と比べてひどく落ち込んだり、精神的に不安定になったりもしましたが、それでも、「そんな自分でもいいんだ」と思わせてくれる多くの居場所や存在のおかげで、今生かされているのだと思います。

安心、安全な場があることで自分のやりたいことに向かって動くことができるようになり、クラウドファンディング、開業、居場所設立など、一歩ずつ歩んでいる最中です。

②相談現場から学んだこと


 自殺対策支援の相談を受ける中で、「今すぐ死にたい」「安楽死したい」「逃げ場がない」という緊急性の高い相談がある中で、

「人知れず死にたい気持ちを抱えながら日常生活を送っている」という若者の多さに、気付かされます。「パパゲーノ」とも呼ばれるその人たちは、私にとってとても身近な存在のように思えました。「本音を話せる人がいない」「人前では明るく振舞っている」「弱いところを見せられない」・・・。過去の自分を見ているようだったからです。

 

 鍼灸マッサージ院へお越しくださる方の中にも、「死にたいといつも思っている」「いつ死んでもいい」とお話される方がいます。

同じように日常を送っているけれど、常に生と死の中で揺らいでいるのです。

 

 

 そんな中、所属している自殺対策支援の団体が「リアル居場所」という取り組みを始め、普段はオンラインで接している方たちとリアルで会う機会を持てるような仕組みができました。

 私もその居場所に参加をして、参加者のみなさんと共に時間を過ごしました。対話をしたり、塗り絵をしたり、写経をしたり、何もしなかったり・・。

 同じような気持ちを持った方と話すこと、わかち合うこと、そして「同じ空間にただ一緒にいる」という状況に、不思議な温かさを感じました。対話の中では、「誰にも話せなかったことを話せた」と涙を流す方もいらっしゃいました。

 

 死にたいけど、生きることを選ぶ。

誰かとその気持ちを共有するだけで楽になることがあるのだと、参加者の方の感想を聞いて実感しました。

 そしてできるならば、自分でもそんな温かい居場所をつくりたい、と考えたのです。

 

③今、行動する理由


 2022年3月に鍼灸マッサージ院を開業して、このengawaを立ち上げたのが2023年5月。開業から一年ほどしか経っておらず、お店が繁盛して潤っている…とも言い難い状況の今。だからこそ、今行動するべきだと思いました。 

 もし、お店が大人気で予約も取れないほど埋まっていたとしたら。engawaを立ち上げる気持ちの余裕も、時間もなく、現状を維持しているのだと思います。きっとその道は自分には向いていないのだとも感じます。

 

 ホームレスのおじさんたちへ施術をさせていただいたり、リアルな居場所に参加したり、そんなときの自分は等身大でありのままでいられます。

どちらが上でも下でもなく、人として向き合っているその時間の尊さ。

 

 

 そして、コロナ禍でオンラインが主流になっていた頃から、アフターコロナへ向かっている今。

対面で会うことに抵抗が少なくなりつつある今、リアルな居場所を必要としている人たちは増えていくのではないかと感じます。

 

 コロナ禍が想像以上に長期化し、人と会うことに不安を抱える方も少なくないのではないかと危惧しています。そんな方にも、このengawaで少しくつろいでもらえたら…と思っています。




 自分の存在を否定したり、生きる意味が分からなくなっている方たちへ。

「自分のままでいい」と少しでも感じてもらえるように。対話を重ね安心感が増すことで、生きていてもいいかもしれない、と感じられるように。


心の休憩処engawaを、これからよろしくお願いいたします。